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契約・フリーランス新法

ホームページの保守契約書の書き方:範囲・対応時間・解約と引き継ぎ

保守を請ける制作者向けに、契約書に書く7つのことを条文例つきで整理。作業の範囲の別表、PHP 8.2 のサポート終了への備え、受付・着手・復旧の書き分け、フリーランス法の30日前予告、引き継ぎと著作権、印紙と電子契約まで。

ホームページの保守を月額で請けているのに、契約書は見積書とメールだけ、というフリーランスや小さな制作会社に向けた記事です。保守契約書に何をどう書けば「それは月額に入っていると思っていた」「急に解約された」「解約後にログイン情報を全部渡せと言われた」を防げるのかに答えます。結論は、作業の範囲を「含む・含まない・別料金」の表にし、対応時間を受付・着手・復旧に分け、解約の予告と引き継ぎの中身まで書くことです。記事の後半に、そのまま使える条文の骨組みと、お客さんに渡す前のチェック表を載せました。

この記事は法律や税の個別の判断に答えるものではありません。金額が大きい契約や、揉めかけている契約は、弁護士や税理士に確認してください。フリーランスの方は、弁護士に無料で相談できる「フリーランス・トラブル110番」も使えます。

保守契約書で先に決める7つのことと、今年見直す理由

保守契約書で決めることは、契約の型、作業の範囲、対応時間、費用、期間と解約、引き継ぎ、事故の連絡の7つです。今年は特に「PHP の切り替えを月額に含むか」と「解約の予告」を見直してください。

口約束のまま保守を続けている人は少なくありません。公正取引委員会と厚生労働省がフリーランス法の施行前に行った調査(2024年5月27日〜6月19日、公表は2024年10月18日。回答は委託者3,761件、フリーランス1,539件)では、取引条件を「明示されなかったことがある」と答えたフリーランスが44.6%でした(「明示されたことがない」を含む)。報酬を「60日以内に支払われなかったことがある」と答えたフリーランスも28.1%いました(「60日以内に支払われたことがない」を含む)。支払期日を60日超に決められたかではなく、実際に60日以内に払われなかったことがあるかを聞いた設問です。

見直す理由の1つ目は、PHP 8.2 のセキュリティサポートが2026年12月31日で終わることです(php.net)。WordPress は PHP 8.3 以上を推奨しています(wordpress.org)。PHP を切り替えるとテーマやプラグインが動かなくなることがあり、その改修が月額の「更新作業」に入るのかは、決めていないと揉めやすいところです。

2つ目は、2024年11月1日に施行されたフリーランス法です。お客さん(従業員のいる会社)があなた(従業員のいないフリーランス)に保守を6か月以上続けて頼んでいる場合、お客さんの側から解約するときは30日前までの予告が要ります。自分がどの立場にあたるのかを、契約書を作る段階で確かめておくと話が早くなります。

決めること 書かないと起きやすいこと
契約の型(準委任か請負か) 「直らないなら払わない」と言われる
作業の範囲 PHP の切り替えや改修を月額の中でやることになる
対応時間 夜間・休日の電話、「24時間以内」の解釈違い
費用 超過作業の請求で揉める、値上げを切り出せない
期間と解約 月の途中の解約で日割りするかどうかの言い合い
引き継ぎ 名義があなたのアカウントやドメインが宙に浮く
事故の連絡 改ざんに気づいた後の連絡が遅れ、お客さんの報告に間に合わない

契約の型: 月額の保守は準委任、改修は請負に分ける

月額の点検・更新・監視は「準委任」、まとまった改修は「請負」として、別々に約束するのがおすすめです。準委任は作業をすること自体が仕事で、請負は完成させた結果が仕事なので、責任の範囲と報酬の請求のしかたが変わります。

民法では、法律行為でない事務を任せる準委任に、委任の規定が準用されます(656条)。委任は、各当事者がいつでも解除できます(651条1項)。ただし、相手に不利な時期に解除したときなどは、やむを得ない事由がなければ損害を賠償します(同2項)。途中で終わったときは、すでにした履行の割合に応じて報酬を請求できます(648条3項)。

請負は結果に責任を持つ契約です。納めたものが契約の内容に合っていないとき、注文者はそれを知ってから1年以内に通知すれば、直してほしい、減額してほしいなどと求められます(637条)。保守の月額を請負で組むと、「サイトが落ちた月は仕事が完成していない」と言われる余地が生まれます。

準委任(月額の保守) 請負(スポットの改修)
仕事の中身 決めた作業を行うこと 決めた結果を完成させること
報酬の請求 期間が過ぎた後。途中で終われば履行の割合に応じて 完成・引渡しのとき
結果の保証 しない(注意を尽くして作業する) 契約の内容に合うものを納める
契約書での書き方 作業の一覧と頻度を別表に 改修ごとに見積書・仕様書を付ける

実務では、保守契約書の本体に「月額の作業は準委任とする」「別表に含まない作業は、その都度見積りを出し、合意したものを個別の契約として行う」と書いておきます。成果に対して報酬を払う型の準委任もあります(648条の2)が、保守の月額でこれを選ぶと請負と同じような議論になりやすいので、選ぶなら理由をはっきりさせてください。

ただし、契約書の題名に「準委任」と書けば何でも準委任になるわけではありません。中身で判断されます。印紙税では、国税庁がエレベーターの保守契約を請負として扱った例があります(後の「印紙と電子契約」の節で書きます)。

作業の範囲: 「含む・含まない・別料金」を表で書く

作業の範囲は、本文に書かずに別表にまとめ、作業ごとに頻度と上限を数字で書きます。「保守一式」「必要に応じて対応」は、あとで必ず解釈が分かれます。

別表にする作業を考えるときは、IPA の「安全なウェブサイトの運用管理に向けての20ヶ条」が下敷きに使えます。たとえば、修正プログラムを適用すること、不要なアカウント(開発やテストで使ったもの)を削除すること、ログを保管して定期的に確認することが挙げられています。また、レンタルサーバーなどを使う場合は、サービス事業者がどこまで対策しているかを把握するよう求めています。サーバー会社がやることと、あなたがやることを、別表で分けておきましょう。

別表の例を下に載せます。頻度や上限の数字は例なので、自分の作業量に合わせて変えてください。

作業 頻度・上限(例) 月額に含むか
WordPress 本体・テーマ・プラグインの更新 月1回。更新前にバックアップを取る 含む
更新後の表示の確認 指定した5ページとお問い合わせフォーム 含む
バックアップ 毎日。14日分を保存 含む
死活監視と、停止時の連絡 常時(監視ツールによる) 含む
不要なアカウントの点検 月1回 含む
文言・画像の差し替え 月3回まで、1回30分まで 含む
上限を超えた差し替え 30分単位 別料金
PHP の版の切り替え お客さんと日程を決めて実施 含まない(見積り)
切り替えや更新で動かなくなったテーマ・プラグインの改修 内容を調べてから 含まない(見積り)
新しいページ・機能の追加 都度 含まない(見積り)
サーバー・ドメイン・有償プラグインの費用 年額・月額 実費(立替えなら手数料も書く)

PHP の行は、今年いちばん揉めやすいところです。「版の切り替え作業そのもの」と「切り替えで壊れたものの改修」を別の行にしておくと、切り替えだけを月額に入れ、改修は見積りにする、という線を引けます。逆に月額に全部含めるなら、その分を月額に上乗せするか、年1回までなどの上限を書いてください。

対応時間: 受付・着手・復旧を分けて書く

「24時間以内に対応」とだけ書くと、お客さんは「直る」、あなたは「返信する」と読みます。受付時間、着手までの目安、復旧の目標を分けて書き、復旧は「目標」として約束しないのが準委任の考え方に合います。

まず、障害の重さを3段階くらいに定義します。そのうえで段階ごとに着手の目安を決めます。

重さ 例 着手の目安(例)
重大 サイトが表示されない、改ざんの疑い、フォームが送れない 受付から4営業時間以内
中 一部のページの表示崩れ、一部の機能が動かない 受付から2営業日以内
軽微 文言の誤り、画像の差し替え 月の差し替え枠の中で、5営業日以内

受付時間は「平日10時〜18時(年末年始・祝日を除く)」のように書き、時間外に受けた連絡は翌営業日の受付とみなすと決めます。連絡の窓口(メール・チャットの宛先)も1つに決めて書きましょう。夜間・休日も対応するなら、別料金にするか、月額を上げるかを先に決めます。

改ざんや情報の漏えいの疑いは、別の条にして連絡の期限を決めておきます。個人情報保護委員会は、ウェブサイトが改ざんされて入力した個人情報が第三者に送られた場合などを、報告が必要な例に挙げています。報告するのはお客さん(個人情報を扱う事業者)で、発覚から速報は3〜5日以内、確報は30日以内(不正の目的によるものは60日以内)です。保守を請けるあなたが気づいてから何時間以内にお客さんへ知らせるかを決めておかないと、お客さんの報告に間に合わなくなります。

第6条(事故の連絡)
乙(保守を行う者)は、本件サイトの改ざん、不正なアクセス、または個人情報の漏えいのおそれに気づいたときは、気づいた時から24時間以内に、甲(お客さん)の連絡窓口にメール等で知らせる。乙は、甲が関係機関への報告に必要とする情報(気づいた日時、影響の範囲の見込み、とった措置)を、わかる範囲で速やかに提供する。

「24時間以内」は例です。受付時間外も含めて守れる時間を書いてください。

費用: 月額の根拠・超過・実費・支払期日・改定

費用の条には、月額のほかに、超過作業の単価、実費の扱い、支払期日、改定のしかたまで書きます。月額は「作業の時間×自分の単価」で説明できるようにしておくと、値下げを求められたときに作業を減らす交渉に変えられます。

保守の月額の相場は、公的な調査が見つからなかったため、この記事では数字を出しません。代わりに、別表の作業から組み立てる例を示します。

  • 例の前提: 自分の時間単価を6,000円とする。毎月の更新と確認に1.5時間、バックアップ・監視・アカウントの点検に0.5時間、文言の差し替え枠(月3回×30分まで)に1時間かかるとする
  • 例の計算: (1.5 + 0.5 + 1) 時間 × 6,000円 = 18,000円(税抜)

こうしておくと、「差し替え枠をなくせば月額は12,000円になります」と、作業と金額を結びつけて話せます。相場のつかみ方は「ホームページの保守費用の相場:払いすぎ・足りなすぎの見分け方」も参考にしてください。

超過作業は「30分単位で切り上げ、1単位3,000円(税抜)」のように、単位と単価を書きます。作業の前に見積りを出して合意を取るのか、上限内なら事後報告でよいのかも決めておきます。実費は、サーバーやドメイン、有償プラグインのライセンスを誰の名義で、誰のカードで払うのかを書きます。あなたが立て替えるなら、請求の時期と手数料を書きましょう。

支払期日は、相手によって法律の上限が変わります。お客さんが従業員を使う事業者で、あなたが従業員のいないフリーランスなら、フリーランス法により、報酬の支払期日は役務の提供を受けた日から60日以内のできる限り短い期間で決める必要があります。月締めの場合は「2か月以内」として運用されます(公取委 Q&A)。制作会社がお客さんから請けた保守をあなたに再委託している場合は、条件を満たせば、元の委託の支払期日から30日以内で決めることもできます。

改定(値上げ)は、「乙は、改定の3か月前までに書面またはメールで通知し、甲と協議のうえ改定する」のように、手順を書いておきます。手順があれば、PHP の切り替えや作業の増加を理由に、毎年の更新のときに見直しを切り出せます。

期間・更新・解約: 30日前の予告と日割りを書く

期間は1年の自動更新とし、解約と更新しないことの通知は「30日前までに書面またはメールで」と書くのが安全な形です。「1か月前まで」と書くと、2月をまたぐときにフリーランス法の30日に足りないことがあります。あわせて、月の途中で終わったときの日割りを決めておきます。

フリーランス法では、従業員を使う発注者は、従業員のいないフリーランスに6か月以上の業務を委託している場合、契約を解除するときや更新しないときに、少なくとも30日前までに書面やメールなどで予告しなければなりません。予告からの間にフリーランスが理由を求めたら、理由も開示します(公取委 特設サイト)。保守の契約で数え方に効くのは、公取委の Q&A の次の点です(2026年10月16日に閲覧した版。ページの表示は「8月26日更新」で、問の番号は改訂で変わることがあります)。

論点 公取委 Q&A の考え方
期間の始まり 契約を結んだ日と基本契約を結んだ日のうち早い日(Q60)
更新で続く契約 当事者が同じで内容が一定程度同じ、かつ空白期間が1か月未満なら、続いているとみなす(Q64)
30日の数え方 予告した日から解除日の前日までに30日間あること(Q107)
予告の方法 メール等でもよいが、本文か添付が出力できるものに限る(Q114)

30日は暦の日数で数えるので、「1か月前」と同じではありません。Q107は「8月31日に解除するなら8月1日までに予告」という例を挙げています。同じ数え方で、2027年3月1日に解除するなら1月30日までの予告が要り、「1か月前」の2月1日に予告すると28日しかありません。

つまり、3か月契約を空白なしで2回更新した保守は、6か月以上の委託にあたりえます。なお、この予告は発注する側の義務です。あなた(受注側)から解約するときの予告期間は、法律ではなく契約で決めます。あなたが従業員を使っている会社なら、この法律の「フリーランス」にはあたりません。

月の途中で終わったときの月額は、民法の「履行の割合に応じて」の考え方に沿って、契約で決めておきます。たとえば「月の途中で終了したときは、その月の委託料を日割りで計算する」と書きます。

  • 例の前提: 月額18,000円、30日の月の10日目の終わりで終了
  • 例の計算: 18,000円 × 10日 ÷ 30日 = 6,000円

日割りにせず「月の途中で終了しても、その月の委託料は全額とする」と決めることもできます。どちらにするかを書いておくことが大事です。651条2項の損害賠償の扱い(不利な時期の解除)で揉めないよう、「30日前までの通知による解約は、互いに損害賠償の対象としない」と添えておくとよいでしょう。

解約のときの引き継ぎ: 何を、いつまでに、どの形で渡すか

引き継ぎの条には、渡すものの一覧、渡す期限、名義の移し方、引き継ぎ作業の料金を書きます。これがないと、解約の連絡のあと「全部渡してほしい」と言われ、無償で何日も作業することになりかねません。

渡すものは、契約を結ぶ時点で一覧にしておきます。

渡すもの 形 名義があなたのときの扱い(例)
WordPress の管理者アカウント お客さん用の管理者を作って伝える あなたの管理者は渡した後に削除
サーバー(管理画面・SFTP/SSH) お客さん名義の契約に移す、または接続情報を渡す お客さん名義へ移す作業は有償
ドメイン 登録者の変更、または移管に必要な認証コード 登録業者の手順に従う。登録者の変更のあと移管が一定期間できなくなる場合があるので、登録業者の規約を確かめる
DNS の設定 設定の一覧(NS・A・MX・TXT など) 一覧を作る作業は月額に含む
バックアップ 最新のファイル一式とデータベース 渡す形式と方法(ダウンロード URL など)を書く
有償テーマ・プラグインのライセンス ライセンスの移し替え、またはお客さんによる買い直し 規約で移せないものは一覧に明記
ソースコード(Git など) リポジトリの移管、または ZIP 自作の共通部品は下の「権利」の条で扱う
2段階認証の端末・メールアドレス 認証の設定をお客さんの端末・アドレスに移す 移した後に自分の端末から外す

期限は「解約日から14日以内」のように書き、その期間の作業を月額に含むか、時間単価で請求するかを決めます。渡し終えたら、自分のアカウントや鍵を削除したことをお客さんにメールで報告します。IPA の20ヶ条が挙げる「不要なアカウントの削除」を、自分の側からも実行する形です。

権利の条も、引き継ぎに直結します。著作権を譲渡する契約で、翻案権など(著作権法27条)と二次的著作物の利用の権利(28条)を特に書いていないと、これらは譲渡した側(あなた)に残ったものと推定されます(同法61条2項)。お客さんが解約後に別の制作者へ改修を頼むことを考えると、譲渡するなら「27条及び28条の権利を含む」と書くのが親切です。ほかの案件でも使う自作の部品(共通のテーマやコード)は譲渡から外し、お客さんのサイトで使い続けてよいという利用許諾にしておきます。

あなたの側から保守をやめたいときの伝え方や後任の探し方は、「保守をやめたい制作者の引き継ぎ手順:伝え方・名義・後任探し」にまとめています。後任が見つからないときは、Handoff で、お客さんの名前やサイトの URL を伏せたまま「保守を引き継いでほしい」と出すこともできます。

契約書の交わし方と条文の骨組み: 印紙を確かめてから渡す

最後に、契約書を紙で交わすか電子で交わすかを決め、条文の骨組みとチェック表で抜けを確かめてからお客さんに渡します。

印紙と電子契約: 紙で交わすなら金額の書き方で変わる

紙の保守契約書には印紙が要る場合があり、月額と期間の書き方で税額が変わります。PDF をメールで送って合意する形なら、印紙は要らないとした国税局の回答があります。

国税庁は、毎月一定の料金で続けて行うエレベーターの保守契約を請負とし、月額と契約期間が書いてあれば「月額×期間の月数」を記載金額とする第2号文書(請負に関する契約書)として扱うと答えています。月額10万円・1年なら記載金額は120万円です。「申し出がなければ延長する」という更新の定めがあっても、延長分は月数に入れません。

同じ回答は、営業者の間で続けて行う保守の基本的なことを定める契約書は第7号文書(継続的取引の基本となる契約書)にもあたり、契約金額の書いていないものは第7号文書になるとしています。別の質疑応答(エレベータ保守についての契約書)でも、月額の記載はあるが契約期間の記載がないため記載金額を計算できない保守契約書を、第7号文書としています。第7号文書の税額は1通4,000円です。ただし、契約期間が3か月以内で更新の定めがないものは除かれます。

保守契約書の書き方(紙) 扱い(国税庁の質疑応答による) 税額
月額と期間を書く(例: 月額18,000円・1年) 第2号文書。記載金額は 18,000円 × 12か月 = 216,000円 1万円以上100万円以下なので200円
期間はあるが月額を覚書で別に決める 第7号文書 4,000円
月額はあるが期間を決めていない 第7号文書 4,000円

ホームページの保守が準委任にあたり、請負の要素がなければ課税されない、という解説もあります。ただ、国税庁は保守を請負と扱った例を示しており、契約の題名ではなく中身で判断されます。自分の契約書が課税されるか迷うときは、税務署か税理士に確かめてください。

電子契約については、福岡国税局が2008年10月24日の文書回答で、請負契約の注文請書を PDF にしてメールで送った場合は、現物を渡さない限り課税文書を作ったことにはならない、という照会者の見解を「差し支えありません」と答えています。保守契約書も、PDF をメールで送って合意する形や電子契約サービスで交わす形にすれば、印紙の手間を省けます。紙に印刷して両者が押印し、原本を渡すと、紙の契約書として扱われる点に注意してください。

条文の骨組みと、お客さんに渡す前のチェック表

ここまでの内容を、条文の骨組みとチェック表にまとめます。条文は骨組みなので、自分の契約に合わせて言葉を足してください。Handoff の無料の保守契約書のひな形を下敷きにしてもかまいません。

ホームページ保守契約書(骨組み)

第1条(目的)甲は、甲のウェブサイト(以下「本件サイト」)の保守を乙に委託し、乙はこれを受託する。
第2条(業務の範囲)乙が行う業務は別表1のとおりとし、別表1に含まない作業は、乙が見積りを示し、甲乙が合意したときに個別の契約として行う。
第3条(契約の性質)第2条の月額の業務は準委任とし、乙は善良な管理者の注意をもって行う。乙は、本件サイトが常に正常に動くことを保証しない。
第4条(対応時間)受付時間、障害の重さ、着手の目安は別表2のとおりとする。復旧までの時間は目標とする。
第5条(委託料と支払)月額、超過作業の単価、実費の扱いは別表3のとおりとする。甲は、毎月末日締めで、翌月末日までに乙の指定する口座に振り込む。
第6条(事故の連絡)(前の節の条文例)
第7条(再委託)乙は、甲の事前の承諾を得て、業務の一部を第三者に委託できる。
第8条(責任の上限)乙が甲に損害を賠償するときは、乙の故意または重大な過失による場合を除き、直近3か月分の月額を上限とする。
第9条(期間と解約)期間は契約日から1年とし、期間満了の30日前までにどちらからも申し出がなければ同じ条件で1年更新する。甲乙は、30日前までに書面またはメール(本文または添付ファイルを出力できるもの)で通知して解約できる。30日は、通知した日から解約日(更新しないときは期間満了日)の前日までで数える。月の途中で終了したときの月額は日割りで計算する。
第10条(引き継ぎ)契約が終わるとき、乙は別表4のものを、終了日から14日以内に甲に渡す。名義の変更などの作業は別表3の単価による。
第11条(権利の帰属)乙が本件サイトのために作った著作物の著作権(著作権法第27条及び第28条の権利を含む)は、委託料の支払いが済んだときに甲に移る。ただし、乙が前から持っていたもの、ほかでも使う共通部品は乙に残り、乙は甲に本件サイトでの利用を許諾する。
第12条(協議)定めのないことは、甲乙が誠実に協議して決める。

第5条の「翌月末日払い」は、月末締めで役務の提供から2か月以内に収まる例です。第8条の上限や第10条の期限の数字は、案件の規模に合わせて決めてください。

お客さんに渡す前に、次の表で抜けを確かめます。

確かめること 済
別表1で、作業ごとに頻度と上限を数字で書いた
PHP の切り替えと、それによる改修を、含むか含まないか書いた
サーバー・ドメイン・ライセンスの名義と、費用を払う人を書いた
受付時間・着手の目安・復旧の目標を分けて書いた
改ざんや漏えいの疑いを知らせる期限を書いた
超過作業の単位と単価、事前に合意するかを書いた
支払期日が、役務の提供から60日(月締めなら2か月)以内に収まっている
改定の通知時期と協議の手順を書いた
更新の有無、解約の通知期限、月の途中の日割りを書いた
引き継ぎで渡すものの一覧、期限、作業の料金を書いた
著作権を譲渡するなら27条・28条を書き、共通部品を外した
紙で交わすか電子で交わすかを決め、紙なら印紙を確かめた

制作会社から保守の再委託を受ける場合は、相手が明示すべき取引条件(業務の内容、報酬の額、支払期日など)がそろっているかも確かめます。明示の項目と文例は「フリーランス新法の取引条件明示テンプレート:Web制作の発注書とチャット文例」にまとめています。

明日からやること

  1. いま請けている保守を一覧にし、契約書がないもの、PHP の切り替えの扱いが決まっていないものに印を付ける
  2. 上の別表1の例を自分の作業に書き換え、作業の時間から月額を計算し直す
  3. PHP 8.2 で動いているサイトのお客さんに、2026年12月31日のサポート終了と、切り替えの見積りを伝える
  4. 次の更新の1か月前を目安に、条文の骨組みとチェック表で作った契約書を、PDF をメールで送る形で提案する

出典・参考

  1. 民法(第637条・第648条・第648条の2・第651条・第656条)(デジタル庁 e-Gov法令検索)
  2. 著作権法(第27条・第28条・第61条)(デジタル庁 e-Gov法令検索)
  3. フリーランス法特設サイト(公正取引委員会)
  4. フリーランス・事業者間取引適正化等法に関するQ&A(公正取引委員会)
  5. フリーランス取引の状況についての実態調査(法施行前の状況調査)結果について(令和6年10月18日)(公正取引委員会)
  6. 建設業などでフリーランス法の浸透の遅れが明らかに(ビジネス・レーバー・トレンド 2024年12月号)(労働政策研究・研修機構)
  7. 知っていますか?フリーランス・事業者間取引適正化等法が2024年11月1日に施行されました(中小企業庁)
  8. Supported Versions(The PHP Group)
  9. Requirements(WordPress.org)
  10. 安全なウェブサイトの運用管理に向けての20ヶ条(情報処理推進機構(IPA))
  11. 漏えい等の対応とお役立ち資料(個人情報保護委員会)
  12. 質疑応答事例 エレベーターの保守契約書(国税庁)
  13. 質疑応答事例 エレベータ保守についての契約書(国税庁)
  14. No.7102 請負に関する契約書(国税庁)
  15. No.7104 継続的取引の基本となる契約書(国税庁)
  16. 請負契約に係る注文請書を電磁的記録に変換して電子メールで送信した場合の印紙税の課税関係について(国税庁 福岡国税局)

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Handoff 編集部Web 制作者どうしで案件と保守を渡し合う場「Handoff」の編集部です。制作の現場と、ホームページの保守の困りごとについて書いています。