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契約・フリーランス新法

フリーランス新法とWeb制作の外注:条件の明示・60日払い・発注文例

フリーランス新法でWeb制作の外注は何をすればよいか。フリーランスどうしでも必要な条件の明示、受領から60日以内の支払期日の数え方、再委託の30日、振込手数料の禁止、保守の終了の予告を、発注メールの文例と日付の計算例つきで整理しました。

Web 制作の案件をほかの制作者に出すとき、フリーランス新法(2024年11月1日施行)で何をしなければならないのか。この記事は、制作会社やフリーランスのディレクター・デザイナーで外注を出す人、コーダーなど外注を受ける人に向けて、この問いに答えます。結論から言うと、依頼したらすぐに条件を文字で送ること、納品から60日以内の日付で払うこと、報酬から勝手に差し引かないことの3つが柱です。最後まで読めば、そのまま貼れる発注メールの文例と、支払期日を日付で出す計算の手順を持ち帰れます。

この記事は法律の一般的な説明です。個別の取引が違反に当たるかどうかは、記事の最後に挙げる相談窓口や弁護士に確かめてください。

最低限やることは3つ:明示・60日以内の支払い・勝手に引かない

Web 制作の外注で最低限押さえることは、①依頼したら直ちに取引条件をメールやチャットで送る、②納品物を受け取った日から60日以内の支払期日を決めて払う、③振込手数料などを報酬から差し引かない、の3つです。①は外注を出すすべての事業者に、②と③は従業員がいるなど一定の体制の発注者にかかります(次の節で整理します)。

この法律の正式な名前は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」です。取引の部分は公正取引委員会(公取委)と中小企業庁が、募集の表示やハラスメント対策、中途解除の予告などの就業環境の部分は厚生労働省が担当しています。

公取委が2026年6月10日に公表した令和7年度(2025年4月〜2026年3月)の運用状況では、勧告10件・指導1,542件でした。業種別では、Web 制作を含む情報通信業が最多です(Web 制作の事業者でも、デザイン業など別の業種に分類される場合があります)。

公取委の令和7年度の運用状況(2026年6月10日公表) 件数 割合
期日における報酬の支払義務違反 1,135件 41.6%
取引条件の明示義務違反 1,126件 41.3%
買いたたき 250件 9.2%
業種別で最多:情報通信業 575件 37.0%

違反の8割以上が「支払いが期日に遅れた」と「条件を明示していなかった」の2つです。どちらも、発注の手順を一度決めてしまえば防げる種類の違反です。

自分はどの立場か:義務の重さは発注する側の体制で決まる

かかる義務の範囲は、発注する側に従業員(または法人の役員が2人以上)がいるかどうかで変わります。従業員のいないフリーランスどうしの取引でも、取引条件の明示だけは必要です。

法律の言葉では、外注を受けるフリーランスを「特定受託事業者」と呼びます。従業員を使わない個人か、代表者1人だけで他に役員も従業員もいない法人です。外注を出す側は、すべて「業務委託事業者」として第3条の明示の義務を負います。そのうち、従業員を使う個人と、役員が2人以上いるか従業員を使う法人が「特定業務委託事業者」で、60日以内の支払いや禁止行為などの義務が加わります。

「従業員を使用」とは、週の所定労働時間が20時間以上で、31日以上続けて雇う見込みの人を雇っていることです(公取委 Q&A Q3)。同居の親族だけを使っている場合は当たりません(Q16)。短時間のアルバイトだけなら当たらないこともあるため、自分の雇い方を一度確かめてください。

Web 制作のよくある座組みに当てはめると

発注する側 → 受ける側 発注する側の区分 かかる主な義務
従業員のいる制作会社 → フリーランスのコーダー 特定業務委託事業者 明示、60日以内の支払い、(1か月以上なら)禁止行為、(6か月以上なら)中途解除の予告など
役員2人の法人(従業員なし)→ フリーランスのデザイナー 特定業務委託事業者 同上
従業員のいないフリーランスのディレクター → フリーランスのコーダー 業務委託事業者 明示(第3条)のみ
一人法人(役員は代表者だけ・従業員なし)→ フリーランス 業務委託事業者 明示(第3条)のみ
制作会社 → 従業員を雇っている制作会社 対象外(受ける側が特定受託事業者ではない) フリーランス新法はかからない。取適法など別の法律を確かめる

従業員のいないディレクターがコーダーに出す場合も、明示の義務はかかります。60日の義務がかからないからといって支払期日を書かなくてよいわけではなく、明示する事項には支払期日が含まれます。

なお、下請法は改正され、2026年1月1日から「中小受託取引適正化法(取適法)」として施行されています。発注者の資本金や従業員数によっては、フリーランス新法と取適法の両方にかかりうるため、どちらで扱われるかは内閣官房・公取委・中小企業庁・厚生労働省のガイドラインや窓口で確かめてください。

取引条件の明示:Web 制作の案件では何を書くか

依頼したら「直ちに」、書面か電磁的方法で条件を明示します(第3条)。口頭だけでは足りません。

公取委が2026年10月8日に公開した「2026年 フリーランス法特設サイト」では、明示する事項を8つに整理しています。これを Web 制作の言葉に置き換えたのが次の表です。

明示する事項 Web 制作での書き方の例
①発注者とフリーランスの名称 屋号や氏名など、相手を特定できる名前
②業務委託をした日 発注を決めた日(例:2026年10月20日)
③給付の内容 「トップページと下層5ページの HTML/CSS コーディング、WordPress のテーマ化。対応ブラウザは Chrome・Safari・Edge・Firefox の最新版。修正は2回まで」
④給付を受領する日(納期) 「2026年11月20日」と日付で書く
⑤給付を受領する場所 「指定の GitHub リポジトリへの push」「テスト環境へのアップロード」「メールへの ZIP 添付」など、どこに納めるか
⑥検査完了日(検査をする場合) 「納品から7日以内に検査を終える」など、いつまでに確認を終えるか
⑦報酬の額と支払期日 「165,000円(税込)」「2026年12月25日」と、額も期日も具体的に書く
⑧報酬の支払方法(現金以外で払う場合) 銀行振込以外で払うときにその方法

③の給付の内容は、あとのトラブルを防ぐ中心になります。作業の範囲に加えて、「含まないもの」(素材の用意、サーバーやドメインの設定、原稿の作成など)と、修正の回数と範囲を書いておくと、追加の作業が出たときに「最初の条件にない」と双方が確かめられます。

メールやチャットで送ってよい

明示はメール、チャットツール、SNS のメッセージ機能など、受け取る人を特定して送る方法でかまいません(Q&A Q41)。条件を書いた Web ページの URL をメッセージで送る方法も認められています。Slack や Chatwork で送る場合は、あとで探せるように「【発注条件】」のような見出しをつけ、ピン留めしておくと便利です。

決まっていないことがあるとき

ページ数や仕様がまだ決まらないまま着手する案件もあります。正当な理由があって決められない事項は、「決められない理由」と「決まる予定の日」を最初に明示し、決まったら直ちに明示すれば足ります(Q&A Q40)。Q&A では、最終の仕様が決まっていない場合が例に挙がっています。

書き方の例は「下層ページの数は、ワイヤーフレームの確定(2026年10月31日の予定)を待って決めるため未定。確定後に、ページ数と報酬の額を改めて送ります」のような形です。未定事項があっても、決まっていることは最初のメッセージにすべて書きます。

そのまま使える発注メールの文例

ここまでの項目を、メールやチャットにそのまま貼れる形にまとめました。公取委の特設サイトには注文書の Excel テンプレートもあるので、書面の形で残したい場合はそちらも使えます。

件名:【発注条件】○○様サイト コーディングのご依頼(2026年10月20日)

△△様(屋号)

以下の条件で業務をご依頼します。内容をご確認ください。

1. 発注者:□□(屋号・氏名または社名)
2. 受注者:△△(屋号・氏名)
3. 業務委託をした日:2026年10月20日
4. 業務の内容:
   - トップページと下層5ページの HTML/CSS コーディング
   - WordPress のテーマ化(固定ページ・投稿一覧・投稿詳細)
   - 対応ブラウザ:Chrome・Safari・Edge・Firefox の最新版、iOS Safari・Android Chrome
   - 修正:デザインどおりでない箇所は回数に制限なく対応。それ以外の変更は2回まで
   - 含まないもの:原稿・画像の用意、サーバーとドメインの設定、公開後の保守
5. 納期:2026年11月20日
6. 納品の場所と方法:指定の GitHub リポジトリの main ブランチへの push
7. 検査:納品から7日以内(2026年11月27日まで)に確認し、結果をお送りします
8. 報酬の額:150,000円(税抜)、消費税15,000円、合計165,000円
9. 支払期日:2026年12月25日(銀行振込。振込手数料は発注者の負担)
10. 支払期日が金融機関の休業日のとき:翌営業日に払います(順延は2日以内に限る)
11. 未定の事項:なし
    (ある場合は、決められない理由と決まる予定の日を書く)
12. 中止するとき:発注者の都合で中止する場合は、それまでの作業に応じた報酬を払います

【再委託の場合だけ書く】
13. この業務は再委託です
14. 元委託者:◇◇(名称)
15. 元委託の対価の支払期日:2026年12月31日

文例の支払期日(12月25日)は、納期の11月20日に受け取った場合、受領日を1日目として36日目にあたり、60日以内に収まります。納品が遅れて受領日が変わる場合でも、支払期日が受領日から60日以内に収まるかを確かめてください。

Handoff 編集部では、同じ項目を埋めるだけで使える「取引条件の明示書」のひな形を無料で公開しています(https://hand-off.jp/resources/templates/freelance-terms)。

60日以内の支払い:受領日の数え方と日付の計算

特定業務委託事業者は、納品物を受け取った日から60日以内の、できる限り短い期間内で支払期日を決め、その日までに払います(第4条)。60日は受領した日を1日目として数え、検査の有無は関係しません(Q&A Q45)。

検収に時間がかかっても、60日は受領した日から進みます。たとえば受領から検収の完了まで3週間かかったとしても、支払期日の起算日は受領日のままです。やり直しをさせた場合は、やり直した後の納品物を受け取った日が起算日になります(Q&A Q46)。

Web 制作で「受領した日」はいつか

Q&A Q45 では、情報成果物をメールなどで受け取った場合は、発注者のコンピュータに記録された時点を受領としています。記録媒体で受け取った場合は、その媒体を受け取って自分の占有下に置いた日です。

Git リポジトリへの push やテスト環境へのアップロードの扱いは、Q&A に直接の記載がありません。明示の「受領する場所」と「納品の方法」で、何をもって納品とするかを具体的に決めておき、判断に迷う場合は相談窓口で確かめるのが安全です。

支払期日を決めなかった・60日を超えて決めたとき

支払期日を決めなかった場合は「受領した日」が、60日を超える日を決めた場合は「受領した日から起算して60日を経過する日」が支払期日とみなされます(第4条第2項)。つまり、期日を書かずに発注すると、法律上は納品を受けたその日に払う義務があることになります。2025年6月17日に公取委が光文社に出した勧告では、明示をせず、受領した日までに報酬を払わなかったことが違反とされました。

ほかにも、次の点が公式の資料で示されています。

  • 「60日まで延ばせる」ことだけを理由に、これまでより遅い支払期日に変えるのは問題になる(Q&A Q49)
  • 請求書がまだ届いていなくても、決めた支払期日までに払う(特設サイトの「うっかり違反」の例)
  • 「月末まで」のようなあいまいな書き方ではなく、日付で書く(同)

月末締めの支払いは60日に収まるか

「月末締め・翌月末払い」は、Q&A Q48 で、60日以内を「2か月以内」として運用するため問題にしないとされています。一方、「月末締め・翌々月末払い」は60日を大きく超えるため、外注先がフリーランスの場合は見直しが必要です。

例:2026年10月1日に受領 支払日 受領日を1日目として
月末締め・翌月末払い 2026年11月30日 61日目(Q48 の運用で問題にしない)
月末締め・翌々月末払い 2026年12月31日 92日目(60日を超える)

支払期日が土日・祝日のとき

支払期日が金融機関の休業日にあたる場合は、順延が2日以内で、翌営業日に順延することをあらかじめ書面か電磁的方法で合意していれば、結果として60日を超えても問題にしないとされています(特設サイト)。年末年始のように順延が2日を超える場合は、前の営業日に払う必要があります。

日付の計算を間違えないように、受領日から期限を出す小さなスクリプトを作りました。Python 3 の標準ライブラリだけで動きます。祝日と年末年始の休業日は自分で足してください。

from datetime import date, timedelta

# 金融機関の休業日(土日以外)。使う年の分を自分で足す
BANK_HOLIDAYS = {
    date(2026, 11, 3), date(2026, 11, 23),
    date(2026, 12, 31), date(2027, 1, 1), date(2027, 1, 2), date(2027, 1, 3),
}


def is_bank_holiday(d: date) -> bool:
    return d.weekday() >= 5 or d in BANK_HOLIDAYS


def last_day(start: date, days: int) -> date:
    # start を1日目として数えた days 日目
    return start + timedelta(days=days - 1)


def check(received: date, days: int = 60) -> str:
    limit = last_day(received, days)
    if not is_bank_holiday(limit):
        return f"受領 {received} → 期限 {limit}(営業日)"
    nxt = limit
    while is_bank_holiday(nxt):
        nxt += timedelta(days=1)
    prev = limit
    while is_bank_holiday(prev):
        prev -= timedelta(days=1)
    delay = (nxt - limit).days
    if delay <= 2:
        return f"受領 {received} → 期限 {limit}(休業日)→ 順延の合意があれば {nxt}({delay}日の順延)"
    return f"受領 {received} → 期限 {limit}(休業日)→ 翌営業日 {nxt} は{delay}日の順延で不可。{prev} までに払う"


if __name__ == "__main__":
    print(check(date(2026, 10, 15)))
    print(check(date(2026, 11, 2)))
    print(check(date(2026, 10, 20)))
    # 月末締めの例: 10/1 に受領
    r = date(2026, 10, 1)
    for label, pay in [("翌月末払い", date(2026, 11, 30)), ("翌々月末払い", date(2026, 12, 31))]:
        print(f"受領 {r} → {label} {pay} は受領日を1日目として {(pay - r).days + 1} 日目")
    # 再委託: 元委託の支払期日を1日目として30日目
    print(f"元委託の支払期日 2026-12-31 → 再委託先への期限 {last_day(date(2026, 12, 31), 30)}")

python3 deadline.py で実行した結果です(Python 3、2026年10月15日に実行)。

受領 2026-10-15 → 期限 2026-12-13(休業日)→ 順延の合意があれば 2026-12-14(1日の順延)
受領 2026-11-02 → 期限 2026-12-31(休業日)→ 翌営業日 2027-01-04 は4日の順延で不可。2026-12-30 までに払う
受領 2026-10-20 → 期限 2026-12-18(営業日)
受領 2026-10-01 → 翌月末払い 2026-11-30 は受領日を1日目として 61 日目
受領 2026-10-01 → 翌々月末払い 2026-12-31 は受領日を1日目として 92 日目
元委託の支払期日 2026-12-31 → 再委託先への期限 2027-01-29

2026年10月15日の受領なら60日目は12月13日(日)で、順延の合意があれば12月14日(月)に払えます。11月2日の受領なら60日目は12月31日で、翌営業日の2027年1月4日までは4日あるため、12月30日までに払う必要があります。これらは計算の例で、実際の期限は自分の取引の受領日と、使う金融機関の休業日で出してください。

再委託なら「元委託の支払期日から30日以内」も使える

クライアント → 制作会社 → フリーランスのように、受けた仕事の一部をフリーランスに出す場合は、例外があります。最初の明示で「再委託である旨」「元委託者の名称等」「元委託業務の対価の支払期日」の3つを書けば、元委託の支払期日から起算して30日以内で支払期日を決められます(第4条第3項、Q&A Q51)。

上の実行結果のとおり、クライアントから制作会社への支払期日が2026年12月31日なら、フリーランスへの期限はその日を1日目として30日目の2027年1月29日です。3つのうち1つでも書いていなければ例外は使えず、原則の「受領から60日以内」に戻ります。クライアントの入金が遅れそうな案件ほど、発注メールの13〜15の欄を最初から埋めておいてください。

やり直し・仕様変更・中止・振込手数料:1か月以上の案件の禁止事項

特定業務委託事業者が1か月以上の業務委託をする場合は、7つの行為が禁止されます(第5条、施行令第1条)。Web 制作の現場で起きやすいのは、無償のやり直し、発注者都合の中止、報酬からの差し引きの3つです。

禁止行為 Web 制作の場面に置き換えると
受領の拒否 「クライアントの公開が延期になったので、今は受け取れない」
報酬の減額 「予算が減ったので」「振込手数料はそちらで」と払う額を減らす
返品 受け取った後に、フリーランスに落ち度がないのに引き取らせる
買いたたき 通常の対価より著しく低い額を一方的に決める
購入・利用の強制 指定の有料ツールやサービスの契約を受注の条件にする
不当な経済上の利益の提供の要請 契約にない保守や運用の作業を無償で求める
不当な給付内容の変更・やり直し デザイン確定後のレイアウト変更を無償で求める、発注者都合で中止して費用を払わない

期間は、1つの契約なら業務委託をした日から給付を受領する日まで(またはそれ以後の契約の終了日まで)です(Q&A Q60)。「1か月」は、始まりの日から数えて翌月の同じ日の前日までです(Q70)。契約を更新する場合、当事者が同じで内容に一定の同一性があり、前の契約との空白が1か月未満なら、続いているものとして扱われます(Q64)。月ごとに発注書を出す保守や運用の案件は、合わせて1か月以上になりやすい点に注意してください。

やり直しを頼めるのはどこまでか

受領前の確認で、納品物が明示した内容に合っていないと分かった場合は、フリーランスの責任としてやり直しを求められます(Q&A Q82)。逆に言えば、明示した内容に合っているのに、発注者側の好みや後からの変更で直させる場合は、費用を払わないと不当なやり直しになるおそれがあります。

だからこそ、明示の段階で「修正は○回まで」「デザインどおりでない箇所の修正は回数に含めない」のように範囲を書いておくことが、発注する側にとっても受ける側にとっても判断の基準になります。発注者の都合で途中で中止したのに、それまでの作業に見合う報酬を払わない場合も、違反のおそれがあるとされています(特設サイト)。

振込手数料は合意があっても差し引けない

振込手数料をフリーランスに負担させて報酬から差し引くことは、合意の有無にかかわらず報酬の減額に当たります(Q&A Q78)。この扱いは、公取委と厚生労働省の「法律の考え方」が2025年10月1日に改正されたことによるもので、2026年1月1日以降にした1か月以上の業務委託が対象です。実費の範囲でも、合意があっても差し引けません。例外は、フリーランスが自分の都合で振込先を合意した口座から変えた場合の増額分などに限られます(Q78)。「振込手数料は受注者負担」という条件を前から使っている場合は、発注のひな形からこの一文を消してください。

実際の勧告もあります。公取委は2026年8月26日、株式会社ジェイトップに対し、減額の禁止(第5条第1項第2号)の違反で勧告しました。同社は手数料を受注者の負担とする合意を交わしていましたが、2024年11月1日から2025年11月30日までの間に、138名の報酬から実際の振込手数料を超える額、計481,031円を差し引いていました。これは改正の前の行為で、違反とされたのは実費を超えて差し引いた点です。勧告の発表では、2026年1月1日以降の業務委託(1か月以上)については、合意の有無にかかわらず差し引くこと自体が減額に当たると付記されています。

6か月以上の保守契約:終了するなら30日前に予告する

特定業務委託事業者が6か月以上の業務委託(継続的業務委託)を途中で解除するか、更新しないときは、少なくとも30日前までに予告しなければなりません(第16条第1項、施行令第3条)。災害などやむを得ない場合の例外はあります。

月額の保守を外部のフリーランスに任せている制作会社は、更新を重ねて6か月を超えていることが少なくありません。クライアントとの保守契約が終わるなどの理由で外注を止める場合は、終了日の30日前までに、終了日と理由を文字で伝えてください。日数の数え違いを避けるため、余裕を見て早めに送るのが安全です。予告の後に相手から求めがあれば、解除の理由も遅滞なく示す必要があります(第16条第2項)。

6か月以上の業務委託では、相手から申し出があった場合に、育児や介護と仕事を両立できるよう必要な配慮をすることも義務になります(第13条第1項)。6か月未満でも努力義務です(同第2項)。

保守を終える側の連絡の例です。

件名:【保守業務の終了のご連絡】○○様サイト

△△様

○○様サイトの保守業務は、2026年12月31日をもって終了させていただきます。
クライアントとの保守契約が同日で終わるためです。
12月分の報酬は、これまでどおりの条件で支払います。
引き継ぎの資料(サーバーの情報、更新の手順、未対応の依頼)の受け渡しは、
12月中旬までに日程を相談させてください。

この例では、終了日(2026年12月31日)の30日前にあたる2026年12月1日までに送る必要があります。余裕を見て、11月中に送ると安心です。逆に、受けている保守をほかの制作者に引き継いで手放したい場合、Handoff ではお客の名前やサイトの URL を伏せたまま「引き継いでほしい」を出せます。

受ける側ができること:明示がない・払われないとき

受ける側のフリーランスは、条件が送られてこない、期日に払われないときに、まず文字で条件を求め、それでも解決しなければ公的な相談窓口と申出の窓口を使えます。

最初の一歩は、口頭やあいまいな話のまま作業を始めないことです。次のように頼めば、相手が法律を知らなくても角が立ちにくくなります。

ご依頼ありがとうございます。
作業を始める前に、業務の内容・納期・報酬の額・支払期日(日付)・納品の方法を、
このメッセージで送っていただけますか。
フリーランス新法で、発注時に文字で明示することになっているため、お願いしています。

それでも解決しない場合は、次の窓口があります。

窓口 内容
フリーランス・トラブル110番(https://freelance110.mhlw.go.jp/) 厚生労働省から第二東京弁護士会が受託して運営。弁護士に無料で相談でき、和解あっせんの手続も無料。電話 0120-532-110(9:30〜16:30、土日祝日を除く)、メール、ビデオ通話で受け付け
公取委「フリーランス法の違反申出窓口」(https://www.jftc.go.jp/soudan/shinkoku/freelance.html) 発注者の違反を申し出る窓口

なお、法律の罰則は、違反したらすぐに罰金になる仕組みではありません。公取委などの勧告に従わず命令を受け、その命令に違反した場合などに50万円以下の罰金があります(第24条)。実際の運用では指導と勧告が中心で、令和7年度は先に書いたとおり勧告10件・指導1,542件でした。

明日からやること

  • 自分が「業務委託事業者」か「特定業務委託事業者」かを、従業員と役員の数で確かめる
  • 発注のひな形に、支払期日を日付で書く欄と、修正の回数・含まないものの欄を足す
  • 「振込手数料は受注者負担」の一文が残っていれば消す(2026年1月1日以降の1か月以上の業務委託は、合意があっても差し引けない)
  • 「月末締め・翌々月末払い」でフリーランスに払っている取引がないか洗い出す
  • 再委託の案件は、発注メールに元委託者の名称と元委託の支払期日を書く
  • 6か月以上続いている保守の外注を一覧にし、終了する予定があれば30日前の予告日を手帳に入れる
  • 公取委の特設サイトの「取引フロー別チェックリスト」で、自分の発注の流れを一度点検する

出典・参考

  1. 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(令和5年法律第25号)(e-Gov 法令検索(デジタル庁))
  2. 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行令(e-Gov 法令検索(デジタル庁))
  3. フリーランスの取引適正化に向けた公正取引委員会の取組(公正取引委員会)
  4. フリーランス・事業者間取引適正化等法に関するQ&A(公正取引委員会)
  5. 2026年 フリーランス法特設サイト(公正取引委員会)
  6. 注文書テンプレート(Excel)(公正取引委員会)
  7. 取引フロー別チェックリスト(公正取引委員会)
  8. 令和7年度におけるフリーランス・事業者間取引適正化等法第2章の運用状況及びフリーランスに係る取引の適正化に向けた取組(2026年6月10日)(公正取引委員会)
  9. 株式会社光文社に対する勧告について(2025年6月17日)(公正取引委員会)
  10. 株式会社ジェイトップに対する勧告について(2026年8月26日)(公正取引委員会)
  11. 取適法施行に当たり事業者の皆様に御留意いただきたい事項(公正取引委員会)
  12. フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン(内閣官房・公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省)
  13. フリーランス・トラブル110番(厚生労働省(第二東京弁護士会が受託して運営))
  14. フリーランス法の違反申出窓口(公正取引委員会)

フリーランス新法外注発注書支払期日Web制作

Handoff 編集部Web 制作者どうしで案件と保守を渡し合う場「Handoff」の編集部です。制作の現場と、ホームページの保守の困りごとについて書いています。