Web制作の外注の頼み方:急ぎでも揉めない指示書と受ける側が困ること
Web制作の一部を別の制作者に外注するときの頼み方を、そのまま使える指示書のひな形、急ぎの案件で先に決めること、受ける側が困ることの対応表で整理。従業員のいない個人にもかかるフリーランス新法の明示義務と、60日・30日の支払期日の決め方も確認します。
自分の案件のコーディングや WordPress 化を、別のフリーランスや小さな制作会社に頼みたい制作者向けに、急ぎでも揉めない頼み方をまとめました。要点は3つです。「何をもって完成とするか」を先に書くこと、急ぎでも範囲・支払期日・連絡の時間だけは決めてから渡すこと、そしてフリーランスに頼むなら、あなたが従業員のいない個人でもフリーランス新法の「取引条件の明示」の義務を負うことです。そのまま埋めて送れる指示書(発注書)のひな形と、受ける側が困ることを指示書のどの欄で防ぐかの対応表を持ち帰ってください。
この記事が扱う外注:制作者から制作者への部分外注
この記事が扱うのは、Web サイトを持ちたい企業が制作会社に頼む外注ではありません。制作者が自分の受けた案件の一部を、別の制作者に頼む外注です。企業向けの「外注ガイド」で紹介される提案依頼書(RFP)は、企画の段階で目的や予算を伝えるためのものです。コーディングだけを頼むときに要る「対応ブラウザ」「納品の方法」「どこまで直したら完成か」は、ほとんど入っていません。
企業としてホームページの制作会社や保守の乗り換え先を探している場合は、Handoff の企業向けの窓口(https://hand-off.jp/companies)から無料で相談を出せます。
この記事で想定するのは、次のような頼み方です。
- デザインカンプ(Figma・XD など)を渡して、HTML/CSS でコーディングしてもらう
- 静的に組んだページを WordPress のテーマにしてもらう
- 公開中のサイトに下層ページやフォームを追加してもらう
- 自分が手一杯の時期に、案件をまるごと別の制作者に渡す
どの場合も、頼む側が最初に書いた指示の粒度で、手戻りの量と支払いの揉めやすさがほぼ決まります。
頼む前に決める4つ:範囲・完成の基準・お金・連絡
頼む前に決めるのは、範囲・完成の基準・お金・連絡の4つです。中でも抜けやすいのが「完成の基準」で、これがないと修正がいつまでも終わりません。
| 決めること | 書く中身 | 書かないと起きること |
|---|---|---|
| 範囲 | ページ数、テンプレートの数、レスポンシブの有無、WordPress の管理画面で編集できる範囲、フォームの送信先 | 「これも入っていると思った」が後から出る |
| 完成の基準 | 確認するブラウザと画面幅、HTML の検証、画像の形式、誰が何日以内に確認するか | 修正が終わらず、支払いの時期も決まらない |
| お金 | 報酬の額(税込か税別か)、支払期日、支払方法、修正の回数と超えたときの単価 | 請求の段階で金額や時期が食い違う |
| 連絡 | 連絡の手段(Slack・Chatwork など)、返事ができる時間帯、確認の担当者 | 質問への返事が遅れ、その分だけ納期が詰まる |
完成の基準は、受ける側が自分で確かめられる言葉で書きます。「きれいに」「いい感じに」は確かめようがありません。「Chrome・Safari・Edge の最新版と iOS の Safari で、幅 375px・768px・1280px のときにカンプとずれがない」なら、受ける側は納品の前に自分で確認できます。
WordPress 化やページ追加を頼むときは、作業する環境も範囲に含めて書きます。テストサイトを誰が用意するか、本番のサーバーや管理画面のアカウントを渡すのか、使ってよいプラグインと使ってほしくないプラグインは何か、ファイルは Git で受け渡すのか、です。ここが書かれていないと、受ける側は着手の前に質問を重ねることになり、急ぎの案件ほど最初の数日がその往復で消えます。アカウントを渡す場合は、作業用に別のアカウントを作り、納品の後に削除する手順まで決めておくと安全です。
修正は「回数」と「範囲」を分けて書きます。たとえば「カンプとのずれの修正は回数を問わず無料、カンプにない変更は別見積り」のように、受ける側の責任による直しと、頼む側の都合による変更を分けておくと、後で揉めにくくなります。この区別は、後で触れるフリーランス新法の「不当なやり直し」の考え方とも同じです。
そのまま使える指示書(発注書)のひな形
下のひな形は、指示書と発注書を1枚にまとめたものです。矢印の右に書いた「明示」の印は、フリーランス新法で頼む側が明示する項目(公正取引委員会の Q&A の Q35 に並んでいる8項目)にあたる欄です。
発注書(兼 指示書)
【取引の条件】
- 発注者: ○○(屋号・氏名) ← 明示: 名称
- 受注者: ○○(屋号・氏名) ← 明示: 名称
- 発注日: 2026年○月○日 ← 明示: 業務委託をした日
- 業務の内容: トップ+下層3ページのコーディング(Figma 支給)と
WordPress のテーマ化。お知らせの一覧・詳細は管理画面から更新できること ← 明示: 給付の内容
- 納品日: 2026年○月○日 ← 明示: 給付を受け取る期日
- 納品の方法: GitHub の指定リポジトリへの Pull Request ← 明示: 給付を受け取る場所
- 検査完了日: 2026年○月○日 ← 明示: 検査をする場合の検査完了日
- 報酬: ○○円(税込) ← 明示: 報酬の額
- 支払期日: 2026年○月○日 ← 明示: 支払期日
- 支払方法: 銀行振込(振込手数料は発注者が負担)
- 再委託の特例を使う場合: 再委託である旨 / 元委託者の名称 / 元委託の対価の支払期日
【完成の基準】
- 確認するブラウザ: Chrome・Safari・Edge の最新版、iOS の Safari
- 確認する画面幅: 375px / 768px / 1280px でカンプとずれがないこと
- HTML の検証(W3C の Nu Html Checker)でエラーがないこと
- 画像は WebP で書き出し、元の画像も納品物に含める
- 発注者は上の項目だけを確認し、合っていれば検査完了とする
【修正】
- カンプとのずれ・完成の基準を満たさない点の修正: 回数を問わず無料
- カンプにない変更・追加: 1ページあたり○○円、または都度見積り
【素材】
- 支給済み: Figma の URL、ロゴの SVG、トップの写真6点
- 未支給: 下層ページの原稿(○月○日までに支給)。それまではダミーで組む
- 原稿の差し替えは1回まで報酬に含む
【連絡】
- 手段: Slack の共有チャンネル
- 発注者が返事できる時間: 平日10〜18時。質問には翌営業日までに返事する
このひな形は、チャットにそのまま貼って送ってもかまいません。公正取引委員会の Q&A の Q41 は、電子メール・チャットツール・SMS などで送る方法を電磁的方法による明示として認めていて、Web ページの URL を示す方法も挙げています。送ったら、そのメッセージのリンクを自分の案件の記録に残しておきます。チャットで送った後に受ける側から書面を求められたら、遅滞なく渡す必要があります(法3条2項)。
項目を一から並べるのが手間なら、Handoff の無料の資料にある発注書のひな形を下敷きにして、上の「完成の基準」と「素材」の欄を足す使い方もできます。
急ぎの案件の頼み方:先に決めること、後回しにしてよいこと
急ぎのときでも、範囲・完成の基準・支払期日・連絡の時間の4つは決めてから渡します。後回しにしてよいのは、素材の中身と、最初のページ以外の細部です。
| 区分 | 項目 | 理由 |
|---|---|---|
| 先に決める | 範囲(ページ数・機能) | 範囲が動くと見積りも納期も動く |
| 先に決める | 完成の基準 | 急ぐほど「どこで終わりか」の食い違いが出やすい |
| 先に決める | 報酬の額と支払期日 | 法律で明示が求められる項目で、受ける側が受けるかどうかを決める材料になる |
| 先に決める | 連絡のつく時間と確認の担当者 | 質問の返事待ちが、急ぎの案件では一番の遅れの原因になる |
| 後回しでよい | 原稿・写真の中身 | ダミーで組み、差し替えの回数と期日だけ決める |
| 後回しでよい | 下層ページの細部 | トップと共通部品を先に納品してもらい、下層は後の便にする |
急ぎのときは、指示書を送る前に、受けられるかどうかを短く打診すると話が早く進みます。打診の段階で範囲・納期・報酬・支払期日まで書いておけば、相手は空き具合と金額だけで判断できます。打診は次のように書けます。
急ぎのご相談です。下の条件で受けていただけるか、明日12時までにお返事をいただけますか。
・内容: トップ+下層3ページのコーディングと WordPress のテーマ化(Figma 支給)
・納品: 1回目 ○月○日(トップと共通部品)、2回目 ○月○日(下層)
・報酬: ○○円(税込)、支払期日 ○月○日、銀行振込
・未支給の素材: 下層の原稿(○月○日に支給、それまではダミーで組む)
・私の返事できる時間: 平日10〜18時
受けていただける場合は、この条件を正式な発注書にしてお送りします。
打診で合意したら、すぐに上のひな形で発注書を送ります。法律の上では、業務を委託したら「直ちに」明示することになっているため、作業が始まってから発注書を後追いで送る順番にはしないでください。
急ぎの案件ほど、分けて納品してもらうと崩れにくくなります。たとえば「1回目にトップとヘッダー・フッターなどの共通部品、2回目に下層ページ」と分ければ、1回目の確認で方向のずれを早く直せます。分ける場合は、それぞれの納品日と検査完了日を指示書に書いておきます。
報酬の額が急ぎで決めきれないときは注意が要ります。フリーランス新法では、内容を決められないことに「正当な理由」がある項目は委託した時点で明示しなくてよく、決まったら直ちに明示することになっています(法3条1項ただし書)。ただし Q&A の Q40 が挙げる「正当な理由」は、取引の性質上その時点では決められない場合で、「急いでいて決める時間がない」は当てはまりません。決めきれないなら、「基本の報酬○○円。ページが増えた場合は1ページ○○円」のように、決められる部分と計算の仕方を書いて渡します。
特急の料金を付けるかどうかは、頼む側と受ける側で話し合って決めることです。この記事では金額の目安は書きません。決めた場合は、通常の報酬と特急の上乗せを分けて書いておくと、次に同じ相手に頼むときの基準にもなります。
頼む相手を選ぶときは、次の4つを見ておくと外れにくくなります。
- ポートフォリオに、頼む作業と同じ種類の実績(WordPress のテーマを一から作ったものか、既存のテーマの調整か、など)があるか。公開中のサイトなら、自分で画面幅を変えて崩れがないかも確かめられる
- 初めての相手には、全部をまとめてではなく、トップや共通部品だけを先に頼む。その納品で、完成の基準への合い方と返事の速さを見る。この1回目も無償の試し作業にはせず、報酬と支払期日を明示して発注する
- 打診への返事に、範囲や素材についての具体的な質問があるか。条件を確かめずに「できます」とだけ返す相手とは、後で食い違いやすい
- 同時に複数の人に打診するなら、打診の文面にそう書き、決まったら他の人にすぐ断りを入れる
急ぎの案件を頼める相手がそもそもいない、という場合もあります。Handoff は、手が回らない案件を Web 制作者どうしで渡す「案件バトン」を出せる場で、案件を出すひな形には業務の内容・報酬の額・支払期日などの明示の項目が入っています。会員は月500円(税込)で、いまは試験公開中のため無料です。成約の手数料はなく、報酬は当事者どうしで直接やり取りします。
受ける側が困ること7つと、指示書で防ぐ欄
受ける側が困ることの多くは、頼む側が指示書に1行足せば防げます。下の表は、よくある困りごとを、ひな形のどの欄で防げるかに対応させたものです。
| 受ける側が困ること | 何が起きるか | 防ぐ欄 |
|---|---|---|
| 原稿や写真が後から小出しに届く | 組み直しが何度も発生し、時間だけが過ぎる | 素材(未支給の物と支給の期日、差し替えの回数) |
| 「いい感じに」「おまかせで」 | 頼む側の頭の中の正解に当たるまで直しが続く | 完成の基準 |
| 確認する端末とブラウザが決まっていない | 納品の後に「この端末で崩れている」が次々に出る | 完成の基準(ブラウザ・画面幅) |
| 修正の回数と範囲が決まっていない | カンプにない変更まで無料の修正として扱われる | 修正 |
| 支払日が決まっていない、遅れる | 受ける側の資金繰りが立たない | 報酬・支払期日・支払方法 |
| デザインが確定していないのに着手させる | 作った部分が捨てられ、その分の報酬が曖昧になる | 業務の内容(どのカンプのどの版か) |
| 頼む側の返事が遅いのに納期は動かない | 待ち時間の分だけ受ける側の作業時間が削られる | 連絡(返事の期限) |
この中で、法律の上でも問題になりうるのが修正とやり直しです。フリーランス新法は、従業員を使っている発注者が1か月以上の業務委託をした場合に、受ける側に責任がないのに費用を負担せずに内容を変更させたり、受け取った後にやり直させたりすることを禁止しています(法5条2項)。Q&A の Q82 は、受け取る前に確認して、納品物が明示した「給付の内容」に合っていないと合理的に判断できるなら、費用を負担せずに直してもらっても問題にならないとしています。つまり、指示書に書いた内容と完成の基準が、「直してもらってよい修正」と「お金を払って頼む変更」の境目になります。
デザインが確定する前に着手してもらう場合は、どの版のカンプで組むかを業務の内容に書き、版が変わったときの扱いも決めておきます。たとえば「○月○日版のカンプで着手。その後のデザイン変更で組み直す部分は、1ページあたり○○円で追加」のように書けば、急ぎで先に動いてもらった分が無駄働きになりません。頼む側の都合で作り直してもらう分をどう払うかは、最初に決めておかないと後から話し合いにくい点です。
返事の遅れも見落とされがちです。指示書に「質問には翌営業日までに返事する」と書いたら、頼む側もそれを守ります。返事が遅れた日数の分だけ納期を延ばす、と最初に書いておくと、受ける側は安心して質問できます。
フリーランス新法:頼む側のあなたにかかる義務
フリーランスに頼むなら、あなたが従業員のいない個人でも、取引条件を直ちに明示する義務を負います。従業員を使っている場合は、それに加えて支払期日や禁止行為などの義務がかかります。
この法律(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)は、2024年11月1日に施行されました。守られる側は、従業員を使っていない個人のフリーランスと、代表者のほかに役員がおらず従業員もいない法人です(法2条1項)。頼む相手が従業員のいる制作会社なら、この法律の対象ではありません。
頼む側の義務は、従業員の有無と委託の期間で変わります。公正取引委員会のフリーランス法特設サイトの整理を表にすると次のとおりです。
| 頼む側の状況 | かかる義務 |
|---|---|
| 従業員を使っていない | 取引条件の明示 |
| 従業員を使っている(期間を問わない) | 取引条件の明示、期日における報酬の支払、募集情報の的確表示、ハラスメント対策に係る体制整備 |
| 従業員を使っている・1か月以上の委託 | 上に加えて、7つの禁止行為 |
| 従業員を使っている・6か月以上の委託 | 上に加えて、妊娠・出産・育児・介護との両立への配慮、中途解除等の事前予告(30日前まで)と理由の開示 |
ここで言う「従業員を使用」は、1週間の所定労働時間が20時間以上で、かつ継続して31日以上雇用される見込みの労働者を雇っていることです(Q&A の Q3)。法人の場合は、役員が2人以上いるときも、従業員を使っているときと同じ扱いになります(法2条6項)。家族を少し手伝わせているだけの個人事業主なら、従業員を使っていないことが多いはずですが、迷うなら Q&A で確かめてください。
7つの禁止行為は、受領拒否、報酬の減額、返品、買いたたき、購入・利用強制、不当な経済上の利益の提供要請、不当な給付内容の変更・やり直しです。どれも「受ける側に責任がないのに」が前提です。完成の基準を書いておくことは、受け取りを断るときや直してもらうときに、受ける側の責任かどうかを判断する材料にもなります。
明示の義務は、大きな会社でも守れていなかった例があります。公正取引委員会は2026年9月2日、日本郵便に勧告を行いました。2024年11月1日から2025年6月30日までの間に、167人のフリーランスに取引条件を直ちに明示せず、また140人には支払期日を定めないまま、法定の期日までに報酬を払っていなかったというものです。小さな制作者どうしの外注でも、チャットで「お願いします」とだけ送って始めると、同じ「明示していない」状態になります。
命令に違反した場合などには、50万円以下の罰金の定めもあります(法24条)。個別の取引が法律に合っているか迷うときは、「フリーランス・トラブル110番」(厚生労働省から第二東京弁護士会が受託して運営。電話 0120-532-110、土日祝を除く9時30分〜16時30分。料金はかからない)や、公正取引委員会の窓口に相談してください。110番はフリーランスのための窓口ですが、頼む側のあなた自身もフリーランスなら、元請との取引で困ったときに使えます。この記事は一般的な整理で、個別の判断の代わりにはなりません。
なお、フリーランス新法の明示の項目を、チャットで送る文例まで含めて詳しく知りたい場合は、当ブログの「フリーランス新法の取引条件明示テンプレート:Web制作の発注書とチャット文例」も合わせて読んでください。
支払期日の決め方:60日の数え方と、月末締めの扱い
従業員を使っている発注者は、納品物を受け取った日から60日以内の、できるだけ短い期間で支払期日を決めます(法4条1項)。60日は受け取った日を1日目として数えます(Q&A の Q45)。
Web 制作の納品物を受け取った日は、Q&A の Q45 では、電子メールなどで受け取った場合、受け取った側のパソコンなどに記録された時点とされています。Git やデータ便で受け取るなら、自分の手元に取り込んだ日を受領日として記録しておくと、数え間違いを防げます。
下は、受領日を1日目として数えた日数で、受領日を含めて60日目にあたる日を示した例です。
| 受領日 | 60日目 |
|---|---|
| 2026年10月16日 | 2026年12月14日 |
| 2026年10月31日 | 2026年12月29日 |
| 2026年11月30日 | 2027年1月28日 |
月末締め・翌月末払いのように月単位で締める場合、月によっては60日を少し超えることがありますが、Q&A の Q48 はこれを問題にならないとしています。一方で、翌々月末払いは60日を超えることがあります。例として、10月16日に受け取って12月31日に払うと、受領日から77日目になります。従業員を使っていない個人には60日の義務はかかりませんが、明示する項目に支払期日が入る以上、受ける側から見て無理のない期日にしておくのが無難です。
元請の入金を待って払いたいとき:再委託の30日の特例
元請からの入金が納品の60日より後になる場合は、再委託の特例を使うと、元請からの支払期日から30日以内で支払期日を決められます(法4条3項)。ただし、指示書に3つのことを書いた場合に限ります。
| 指示書に書くこと | 書き方の例 |
|---|---|
| 再委託である旨 | 「本業務は、発注者が元委託者から受託した業務の再委託です」 |
| 元委託者の名称等 | 「元委託者: ○○株式会社」 |
| 元委託業務の対価の支払期日 | 「元委託者から発注者への支払期日: 2027年○月○日」 |
この3つは Q&A の Q51 に並んでいます。書かなければ原則に戻り、受け取った日から60日以内に払う必要があります。たとえば元請の支払が納品から90日後の契約なら、特例を使わない限り、元請から入金される前に外注先へ払うことになります。
注意点は2つあります。1つ目に、「元委託業務の対価の支払期日」は、元請との契約で決めた期日のことで、実際に入金された日ではありません(Q&A の Q52)。元請の支払が遅れても、外注先への支払いは指示書に書いた期日のままです。2つ目に、特例が使えるのは、元請の仕事と外注した仕事に業務と対価の関連があるときです(Q&A の Q50)。
元請の名前を外注先に伝えることが、元請との秘密保持の取り決めに触れないかは、先に元請との契約を確かめてください。名前を出せないなら、特例は使えないものとして、60日以内に払える支払期日で組みます。
納品を受けるときの検査と、取適法との関係
納品を受けたら、指示書に書いた検査完了日までに、完成の基準に沿って確認し、結果を伝えます。合っていれば「検査完了」と送り、その記録を残します。
検査の進め方は、ひな形の「完成の基準」をそのまま確認表として使います。
- 決めたブラウザと画面幅で、カンプとずれがないか
- HTML の検証でエラーがないか
- 画像の形式と元の画像が揃っているか
- WordPress の場合、管理画面から決めた範囲を更新できるか
- 合わない点は、どの基準に合わないかを書いて返す
合わない点を返すときは、「完成の基準のこの項目に合わない」と書きます。基準にない注文を検査の場で足すと、受ける側にとっては無料の追加作業になり、前に触れたやり直しの問題に近づきます。足したいことがあるなら、追加の依頼として報酬を決めて頼みます。
最後に、あなたが元請から仕事を受ける側の関係にも触れておきます。2026年1月1日に、下請法を改正した取適法(製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律)が施行され、手形払等の禁止や、協議を適切に行わない一方的な代金決定の禁止が加わりました。対象になるかは、元請とあなたの資本金や従業員の規模で決まるため、公正取引委員会の取適法のページで確かめてください。外注先に誠実に払うことと、元請に支払条件を守ってもらうことは、同じ取引の流れの両端にあたります。
明日からやること
- この記事のひな形をコピーし、自分の案件に合わせて「完成の基準」と「修正」の欄を埋めておく
- 次に頼むとき、チャットで送った指示書のリンクを案件の記録に残す
- 自分が従業員を使っているかを確かめ、使っているなら支払期日が受領日から60日以内になっているかを見直す
- 元請の入金が遅い案件では、再委託の3項目を書けるかを元請との契約で確かめる
出典・参考
- 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(令和5年法律第25号)(デジタル庁 e-Gov 法令検索)
- フリーランス法Q&A(公正取引委員会)
- フリーランス法特設サイト(公正取引委員会)
- フリーランス取引の状況についての実態調査(法施行前の状況調査)結果について(厚生労働省)
- 日本郵便株式会社に対する勧告について(令和8年9月2日)(公正取引委員会)
- 中小受託取引適正化法(取適法)(公正取引委員会)
- フリーランス・トラブル110番(厚生労働省(第二東京弁護士会が受託))