Web制作フリーランスの案件獲得:営業メールより効く3つの経路
Web制作のフリーランスや小さな制作会社が案件を取る経路を、調査と自分の返信率から見直します。特定電子メール法で送ってよい相手の確認リスト、営業メール・納品後の連絡・紹介依頼の文例、経路ごとの返信率を集計する記録表とスクリプトつき。
Web 制作のフリーランスや小さな制作会社が営業メールを何十通送っても返事が来ないとき、送る数を増やすより先に見直すことがあります。この記事では、どの経路に時間を使うか、送ってよい相手をどう線引きするか、自分の返信率をどう測るかに答えます。一斉送信より先に手をかけたいのは「納品済みのお客(既存の取引先)」「紹介」「制作会社の外注パートナー」の3つの経路です。調査でも稼げる経路の上位は「人脈」と「過去・現在の取引先」で、面識のない相手への営業メールは特定電子メール法で送ってよい相手に絞り、経路ごとの返信率と受注額は自分で記録して比べます。
持ち帰れるものは、送る前の確認リスト、法律の表示を入れた営業メールのひな形、納品後の連絡と紹介の依頼の文例、返信率を集計する記録表とスクリプトです。
他人の平均より、自分の経路ごとの数字で決める
営業メールの返信率は、相手の業種、文面、送る時期、自分の実績で大きく変わります。そのため、誰かの「返信率は何%が普通」を目標にするより、自分の経路ごとに「送った数・返信・商談・受注・受注額」を記録して比べるほうが判断を誤りません。
ここでいう経路は、次のように分けておくと記録しやすくなります。
| 経路 | 例 | この記事の節 |
|---|---|---|
| 既存の取引先 | 納品済みのお客、保守中のお客 | 経路1 |
| 紹介 | お客・同業者・知人からの紹介 | 経路2 |
| 制作会社への営業 | 外注パートナーとしての売り込み | 経路3 |
| 公表アドレスへの営業メール | 面識のない企業・制作会社への1通目 | 法律の節 |
| その他 | クラウドソーシング、エージェント、SNS、ブログ | エージェント・クラウドソーシング・SNS の節 |
クラウドソーシングやエージェント、SNS からの相談も同じ表に入れます。クラウドソーシングなら「提案を出した数」を送った数として数え、SNS やブログなら「相談が来た数」を1行ずつ書きます。数え方が経路ごとに違っても、受注額を同じ単位(税込の円)でそろえておけば、どこに時間を使うかは比べられます。
1か月記録すると、経路ごとの違いが見え始めます。数字の取り方はあとの「返信率を自分で測る」の節で、スクリプトつきで説明します。
調査で稼げる経路は、人脈と過去・現在の取引先が上位
フリーランス協会の調査では、収入が得られる経路の上位は「人脈」と「過去・現在の取引先」です。面識のない相手に一斉に送る営業は、上位には入っていません。
一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会が2026年6月9日に公開した「フリーランス白書2026」は、2025年11月1日〜30日の調査です。稼げる経路の順位は次のとおりでした。
| 順位 | 経路 |
|---|---|
| 1位 | 人脈 |
| 2位 | 過去・現在の取引先 |
| 3位 | エージェントサービス |
読むときの注意が2つあります。回答者は協会の会員と関連するコミュニティの人で、職種は Web 制作に限りません。また、公式ブログの要約には回答数と各経路の割合が載っていないため、細かい数字は白書の本文(PDF)で確かめてください。
それでも、Web 制作の実務に当てはめると方針ははっきりします。新しい相手を探す前に、すでに自分を知っている人(納品済みのお客、前に一緒に仕事をした制作会社、同業者)から次の仕事が出る形を作ることです。以下の経路1〜3はその具体策です。
営業メールを送る前に、特定電子メール法で送ってよい相手を確かめる
自分の制作サービスを売り込むメールは、特定電子メール法の「特定電子メール」に当たります。送ってよい相手は法律で決まっており、本文に入れる表示も決まっています。
送ってよい相手(第3条第1項)
この法律は、営利を目的とする団体と営業を営む個人が「自己又は他人の営業につき広告又は宣伝を行うための手段として送信をする電子メール」を対象にしています(第2条)。フリーランスが自分の仕事を案内するメールも含まれます。送ってよいのは原則として次の相手だけです。
- 送ることに前もって同意した相手
- 名刺などの書面で、自分のメールアドレスを知らせてくれた相手
- 取引関係にある相手(納品済みのお客など)
- メールアドレスを公表している団体・営業を営む個人(会社のサイトに載っている問い合わせ用のアドレスなど)
最後の「公表アドレス」には条件があります。総務大臣の指定を受けた日本データ通信協会の迷惑メール相談センターは、アドレスと併せて「送信を拒否する」旨の表示があれば例外とはならず、法律違反の送信になると説明しています。サイトに「営業メールお断り」「広告メールはご遠慮ください」とあれば、そのアドレスには送りません。
一度でも「今後は送らないでください」と返事が来たら、その相手には送れません(第3条第3項)。記録表に「拒否」の列を作り、送り先の一覧から必ず外します。
本文に入れる表示(第4条)
迷惑メール相談センターは、表示の義務を次の5つにまとめています。
| 項目 | 置く場所 |
|---|---|
| 送信者の氏名または名称 | 本文 |
| 受信拒否の通知を受けるメールアドレスまたは URL | 本文 |
| 受信拒否ができる旨 | 上の通知先の直前か直後 |
| 送信者の住所 | 任意の場所 |
| 苦情・問い合わせを受ける電話番号・メールアドレス・URL | 任意の場所 |
罰則もあります。迷惑メール相談センターの説明では、送信者の情報を偽った送信や、措置命令に従わなかった場合などに、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金(法人は行為者のほか法人に3000万円以下の罰金)です。
問い合わせフォームからの営業
問い合わせフォームからの送信がこの法律の「電子メール」に当たるかは、解釈が分かれています。ここでは違法かどうかを断定しません。運用のルールとして、フォームの近くに「営業目的の送信はご遠慮ください」とあれば送らない、と決めておけば迷いません。
送る前の確認リスト
保存して、1通ごとに確かめてください。
出典・参考
- フリーランス白書2026を公開しました(一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会)
- 特定電子メールの送信の適正化等に関する法律(デジタル庁 e-Gov法令検索)
- 特定電子メール法の概要(オプトイン規制・表示義務・罰則)(一般財団法人日本データ通信協会 迷惑メール相談センター)
- 迷惑メール対策(特定電子メールの送信等に関するガイドライン)(総務省)
- フリーランス・事業者間取引適正化等法(公正取引委員会)
- 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(デジタル庁 e-Gov法令検索)
- 民法(第632条 請負、第656条 準委任)(デジタル庁 e-Gov法令検索)
- フリーランス・トラブル110番(厚生労働省(委託先:第二東京弁護士会))